06年度後期 沢パーティ合宿

〜エピローグ〜




3月24日、時刻は12時少し前、俺は日本最西端の値、与那国島の西崎にいた。手すりを乗り越え,崖ぎりぎりまで進む。足下はすっぱりと切れ落ち,岩礁に波が白くくだける。俺は左手の中指から指輪を抜き取り,右手で握りしめた。これまで自分が体験した色々な事を思い浮かべる。そして,海に向かって大きく振りかぶった。




3月22日、海岸歩きを終えた我々はのはら荘に戻ると,洗濯や物干を行ない,一週間ぶりの豪勢な夕食を楽しんだ。その後,部屋に集まりオリオンビールで乾杯。海岸で撮った写真を見ては一週間を振り返る。そして,日付が変わる前に眠りに落ちた。


3月23日、いよいよ西表を離れる日が来た。もともり工房にて,カヌカ貝(鑑定してもらった)をペンダントにしてもらう。貴重な貝だから大切にする様に言われた。10時前にのはら荘を出発。女将さんに別れの挨拶をした。今後も多くの沢面がこの宿を利用するのだろう。そのときも温かく見守っていただきたい。

高速艇にて石垣島へ渡る。離島桟橋で解散宣言をし,石垣島に残る広瀬、北村と別れた。俺は岩田とともに石垣空港へ向かい,与那国行きの便を確保した。岩田は直通便が満席の為,那覇経由で京都に帰る様だ。コインロッカーにザックを詰め込み旅行者モードになった俺は,与那国の宿を予約し,岩田と別れた。ここからは一人旅だ。空港で持て余した時間を使い,記録を書いたり知り合いと連絡をしたり。そう言えば,縦走が撤退したのを知ったのも石垣空港だった。

与那国島へはプロペラ機で渡った。途中、雲の隙間からマリュウドの滝やヌバンが見えた。自分がつい最近まであそこにいたんだと思うと,何だか胸がいっぱいになった。与那国空港にて,宿からの迎えの車に乗り込む。数分で宿に到着。チェックインし,この日は行動終了。入浴、夕食の後はテレビを見てゴロゴロ。23時前に寝た。


3月24日、宿で朝食を済ませ,8時に原付を借りる。与那国島を東へ西へ,色々観光して回った。Dr.コトーをテレビで見ていなかったので,そのロケ地には行っていないが。与那国島の最高峰、宇良部岳もピークハントした。与那国でしか作られない,アルコール度数60度の酒、花酒を造っている工場も見学し,古酒等を購入。そして,最後の目的地,西崎へ向かった。




12時ちょうど,勢い良く投げられた指輪はゆっくりと中を舞い,海の中に消えた。06年の夏に手に入れてから,お守りとしてずっとつけてきた指輪だった。山にもつけたまま登った。俺の悲しみも喜びもこもっている,そんな風に思える指輪だった。それを日本の一番端の海に投げた。今までの自分に区切りを付ける為に。

指輪を投げ込んだ海をしばらく眺める。この西表合宿にかける俺の思い,それは決着をつける事だった。それは果たされたのだろうか。沢では見事に跳ね返されたが、海岸は十分に満足できる内容だった。だが、自分の中で決着がついたといえるのか…?問いかけても聞こえるのは波の音ばかり。「まぁいい、やるだけのことはやったんだから。」そう口に出すと、俺は柵を飛び越え、もと来た道をゆっくりと戻っていった。




京都に帰ってから思うに,自分の中にはっきりとした区切りが出来たわけではない様だ。俺は相変わらず過去を引きずっているし,ワンゲルに関してもまだまだやりたい事がある。西表にも少し未練がある。だが,決着を付けようと思い,その心で合宿に臨めたこと,それ自体に意味があったのではないだろうか。自分の中で色々とけじめを付け,最高の形に持って行く努力をする事,何か物事をするにあたって,大切な事だと思う。これを目指して努力出来た事,今はそれ自体を評価したい。いつかきっと,この経験が自分の中で花開くと期待して。



06年度西表合宿 完


文責:平澤

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