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2006年度前期 藪P.W.

奥美濃 金草岳

概要

【日時】

6月24日入山 25日下山 0付 1泊2日 予備日2日(行1完1) 4人

【メンバー(隊列)】

平澤(Top)−前田−森戸−広瀬

【行程】

1日目:添又谷出合−(1:32)−檜尾峠−(0:51)−金草岳−(6:04)−C.S.1

2日目:C.S.1−(5:08)−下山

【緒言】

今回は主に縦走メンバーに藪経験を伝えることと、予備合宿が延期になって暇をもてあましている沢面3回生を慰めるために、沢の行程中最も過酷と言われる藪漕ぎをあえてP.W.でおこなうことにする。

この金草岳は04年度にCL・SL共に一度通過しており本来の藪修練の目的としては不十分であるが、この計画はP.W.であり薮経験のまったくない縦走面に薮を体験してもらうという趣旨のものであるということであえてこのコースを選んだ。


記録

0日目

午後6時、いつも通りBOXに集合。

なんとも変わったメンバーで薮に挑むことになったわけだが、こちらとしては以前に一度通過した薮であり、面子もタフな人がそろっているので行程に関してはそれほど心配してはいない。今回は前田さんが車を出してくれたのでレンタではなく前田カーに乗り込んで、早々に薮に向かって出発することに。

前田さんが快調に車をとばしてくれたので場所が近いこともあり、晩飯を食べた時間を入れても4時間ほどで目的地の添又谷の林道入り口に到着することができた。ところがC.L.の俺が途中の入山連絡を怠っていたので仕方なく10分ほど車で道を引き返して電波の届くところまで戻ることに。結局入山連絡を終えて再び林道入り口に戻ってきたのは10時20分頃であった。

普段ならレンタカーを借りて行っていることもあり、薮の入山口の林道はぎりぎり進めるところまで進むことにしているのだが(また今回は過去の情報で入山口ぎりぎりの所に広いスペースがあり、そこまでは進んだことがあると聞いていた)、さすがに前田さんの車で周囲の木々に今にも接触しそうな細い林道を進ませるわけにも行かないので、林道に入ってすぐのところのスペースに駐車、後は歩いていくことにした。ところが結果的にはこれが非常によい判断ということになってしまう。なんと車を止めた場所のすぐ先の細い林道が完全に崩落していたのである。数ヶ月前の情報ではこのような崩落箇所はなく、おそらく最近できたものなのであろうがどの道車で通行できるものではなかった。リヒト山行で危険箇所を通過するのはどうかとも思ったのだが、幸い崩落箇所の上を通るように巻き道がつけられており(地元の人が通っているのだろう)、下りはかなり慎重に降りたもののさほど危険を冒すこともなく崩落箇所を巻くことができた。しかしその後の道にも結構倒木とかが落ちていたので、たとえこの崩落がなかったとしても奥まで車で進むことは困難だっただろう。(どうも事前の情報集めが甘かったようだ)この後も道は間違えようもない一本道だったのだが、暗闇の中足場が悪く細い林道を黙々と歩いているとどうにもいらないテンションがあがってしまう。こんなところで無駄に緊張して体力を使ってはとても明日から体が持たないので、俺はできるだけ気を落ち着けるようにして歩いていった。

C.S.0地点に到着したのは11時ちょうど。確かに情報どおりに広いスペースがあり、余裕で4テンを建てることができた。薮のアプローチとしてはかなり早く着いた方なのだが、明日も早いのでみな早々に眠りに着くことにする。C.L.の俺は外寝が好きなので一人外に銀マを敷いて寝ることにしたのだが、この晩は結構アブにやられることとなってしまった。(一応前田さんに借りた電気香取をつけていたのだが)

1日目 晴れのち曇り

入山

4時半起床。さっそくお湯を沸かし始めたのだが、俺と平澤が中でごろごろしている間に前田さんと森戸は外に出てテントのフライを外しだす。さすがは縦走面といったところか、沢面とは朝の機敏さに相当の差が見られるようだ。(まだ朝食も食ってないのにテントの撤収が始まるなんて、なかなかのカルチャーショックだなあ…)朝食は各自昨日買ってきたパンなどで済ませ、体を温めるために熱いお茶を飲むことに。縦走面のパワーもあってかわずか40分で出発できることとなってしまった。(おお沢面の最速記録をあっさり更新)

とりあえずは金草岳までは普通の登山道なのでゆっくりと進むことに。藪漕ぎ山行なので背中に大量の水を背負っていて多少荷物は重くなってはいたが(沢面は沢装備が抜けるためそんなに重くも感じなかった)、どのみちこんな最初の登山道で疲れているようでは後が大変である。それでも1ピッチ目は平澤が結構なペースで引っ張って行ってくれたのでそこそこしんどいものを感じた。(まあ起き抜けの一発目だし、森戸も前田さんもしっかりついてくるから平澤としては少し早めのペースになっていたのかもしれない)

50分少々行ったところで森の中に腰を下ろしてレスト。場所は915mのピーク地点だろう。(薮漕ぎ山行では登山道の部分でも十分な読図を行なうようにしている、こと薮中においては現在地の把握より重要なことはないからだ)今日の行程では決して他の登山客に会うことはないだろうが、これもまた通常の縦走との違いではある。レスト中に平澤が腹の痛みを訴えていたが、たいしたことはなさそうだったのでここではそのまま先に進むことにした。(しかし、薮のTopが体調不良というのは問題ではある。なにしろ薮ではTopは普段とは比べ物にならないほど精神力を使うため、ちょっとしたマイナス要因でも気にかかるものなのだ)

再び登り始めてしばらく行くと、森を抜け視界の開けた場所に出た。なにしろ今回の行程で視界が十分にある場所などこの辺りだけだろうことはわかっていたので、今のうちにせいぜい向こう側の山並みなどを眺めておくことにする。重い荷物を背負って一歩一歩足を上に持ち上げていくと、今度は40分少々で998mピーク手前の県境部分に到着する。左脇にある看板にこの先水場ありと表記されていたので前田さんと森戸が捜索に出掛け、その間は軽いレストということにした。(今回は下から水を持ってきていたが、この場所に水場があることが確認できれば次回からはここで汲めば済むことになる)しかし残念ながら確かな水場は発見できず、降雨時のみの水場なのかも知れなかった。

登りだして15分ほどで再び平澤が腹の不調を訴えて雉を撃ちに行くことに。どうやら腹を壊しているようでありC.L.に内服薬を希望してきたのだが、C.L.の判断で腹痛時にむやみに薬を飲まない方がいいと考えてそのまま進ませる。(実はC.L.が前日にテレビで腹痛時に下痢止めを飲む危険性について語っていたのを見てビビッていただけなのだが)平澤もしだいに体調が回復してきたようで、8時過ぎには金草岳に到着した。

この先はいよいよ薮突入となり、過酷な状況が待ち受けているのは確実だったのでここではしっかりとレストを取っておいた。このあたりでやや空に雲が出始め、この先のルーファイ難地点での視界が気がかりではあったが変わりに気温はそれほど上がらずにすんでいるようだ。

藪突入

さあ、いよいよ薮突入である。

2年前にきたときは俺自身弾かれそうになったほどの薮である。あの時の地獄を思い出すほどに、前田さんと森戸の苦労が偲ばれたがもはや進むしか道はない。この山行が終わったときに、どうか二人が薮嫌いになってないといいのだが。

最初の突入時はほとんど薮ともいえない程度の軽い潅木で、警戒していたルーファイ難地点には意外とあっさり到着した。早くもガスが出てきてはいたが、幸い前方の尾根が完全に見えないほどではなくルートの確認はできそうである。(2年前はこの場所で完全に視界を失い、誤って西側の尾根に流れてしまったのである)しかしさすがにかつて一度ルーファイをミスったほどの場所である。なにしろ前方の進むべき北側斜面の傾斜がすさまじい。直前に立ってみてすら「本当にここを降りるのか?」と疑問になってしまうほどである。今回は2年前の記憶があり、またかろうじて先のほうに尾根が見えるためにここで道を間違えることはもはやないが、それにしてもひどいコースである。

結局意を決して断崖に足を踏み出していったのだが、下りだしてからも相当に困難な薮であった。最初は笹薮メインなのだが傾斜がきつすぎるために笹で足場が隠されると前に足を踏み出すのにかなりの度胸がいる。(この状況でもかまわずズンズンと進んでいく平澤の度胸にはつくづく感服させられる)その笹薮を越えると今度は尾根線上に潅木入り混じったますます厄介な地形が出てきてさらに進みづらくなってくる。どうにか平澤が最短のルートを切り開いて進んでくれてはいるのだが、いかんせん後続とスピードが違いすぎるのでSecの前田さんはどうにもTopが選んだルートを通ることができそうになかった。それでも何とか進んでいくと、今度は薮の合間からむき出しになった岩盤が見えてくる。Topの判断ではぎりぎりクライムダウン(C.D.)も可能だろうとのことだったが、縦走面を二人も連れてC.D.を行なう気にはなれなかったし、少し手前の立ち木にナタ目の入っている場所がありそこから西側に巻ける道があったのでそちらを行くことにする。すでに気温はかなり高くなってきており薮中を走り続けるのは不快感たっぷりの状態だったのだが、時折木々の合間から風が吹き抜けることがありそれがなんとも心地よかった。結局初っ端から1時間半近くのロングピッチの末に、どうにか最初の数百メートルを降りきることができたようだ。レストは急傾斜終了後の平たい場所でとることにした。(地形図上水平距離700m地点、1ピッチ目 時速500m)

これで少しは楽になるかもと思っていたのだが、ここから先も案外厳しい薮が続くことになる。そして今度は動き出してから20分ほど経ったところで急激にペースが落ち始めたのである。わかっていたことだがTopの平澤のペースに後続が着いてゆけず、前田さんがほぼTopの役割をしていたため2ピッチ目にしてバテてしまったようだ。しかし薮中ではTopはひたすら全力を振り絞って道を切り開き、Secは死ぬ気でそれに着いていくというのが薮の自然な隊形なのである。(そのようなペースでさえ、時間通りテン場に着けるかどうかは微妙なところなのだ)後続がバテたからといってペースを落としていては仕方がない。とりあえずまだ体力に余裕がありそうな森戸とSecを交代してもらって、後はお二人に頑張ってもらうだけであった。

11時過ぎに1002mのポコに着いたところで、時間も頃合なので昼食レストをとることにした。(2ピッチ目 時速320m)

昼食は薮恒例のサンドイッチ。(水を使わなくてもよいため薮の昼食によく用いられる)しかし今回は前田さんと森戸がかなりバテており、2人とも100mlの水では乾燥したサンドイッチを飲み込めない状態であった。(薮では飲料水も制限されているため、1レストにつき1人100mlまでとなっている)たしかに少ない水で薮の暑さに耐えられるようになるためには慣れが必要である。ここで本来の薮修練の目的としては邪道ではあるのだが、仕方なく縦走面の2人には手持ちの水を好きに飲んでもらうことにした。(もちろん非常用の水は別に確保してあった)確かにこの乾燥した食パンを飲み込むのはなかなかにしんどいようで、なにしろ噛んでも噛んでも一向に口の中から消えてくれないのだ。平澤はツナ缶の油をうまく利用してスムーズに食べ終えていたようだが、さすがに薮の乾燥対策は十分に身についているようだ。どうにかみんな昼食を流し込み、まだ先が長いので手早く出発することにした。

行動再開したはいいもののいかんせんペースがあがらない。どうやら昼食レストでの回復も気休め程度にしかなっていないようだ。ルーファイはTopの平澤がしっかりしており、また最後尾から俺が細かく修正を続けているので大きく道を間違えることはないのだが、面子の疲労が激しいので多少の登り返しでも結構堪える。それに平澤もずっとTopで突っ走っているのでさすがに疲労の色は隠せないようだ。(集中力が落ちてくると、細かなルーファイをミスりやすいので要注意である)最後尾から着いていくだけの俺はやたらと体力に余裕があり、なんだか申し訳ないような状態であった。(前田さんいわく「平澤と広瀬が、薮に入ったとたんいつもよりいきいきしていたのが憎らしかった」らしいが、確かに後ろからついて行くだけなら薮慣れした俺にとっては縦走路よりはるかに楽である。なにしろ全体のペースが遅い上に、1人だけ皆が薮を掻き分けた後を進めばいいのだから)結局今回も1時間ほど進んだところでレスト。(場所的には水平距離1.4km地点、北側へ下りだす場所の少し手前ぐらいだろう、3ピッチ目 時速340m)

しかしたとえメンバーがバテている状態でも1時間ピッチを続けられるというのは、やはり縦走面がタフだからなのだろう。(普通は体力が無くなってきたら50分ピッチとかになっていくものなのだが)それでも無理をさせているせいかこのあたりから縦走面のペースはさらに落ち始め、さきほどから森戸がすっかり無口になってしまっているあたりにも疲れが見てとれるようだ。とにかく残りは1kmもないのである、彼らには最後の気力を振り絞って進んでもらうことにし、何とか天気図の時間までにテン場につけるようにと先を急いだ。

次の1ピッチはやや短く、50分ほどでレストをとってしまう。(テン場前のポコ手前 水平距離1.8km地点、4ピッチ目 時速460m)

本当はこの先の行程を考えたらここも1時間ピッチで進むべきだったのだが、全員の疲労が激しくこの先の登りを続けて進ませる自信がなかったためつい足を止めてしまったのだ。時刻はすでに1時40分になっており、天気図レストをとらずにテン場に到着するためには次の1ピッチを頑張るしかない状況であった。俺は全員に「さあラスト1ピッチ!」と気合を入れ、テン場が見つかるまでは休憩を取らない覚悟で再び鬱蒼とした奥美濃の藪に足を踏み出し始める。

しかし、ここからが…

もはや森戸も前田さんも体力ゲージは限界に近づいており、踏ん張りがきかないためしょっちゅう笹に弾かれてはその場にひっくり返ってしまう。(密生した笹ほど強靭なものはなく、笹に体重をかけた状態で足を上げようもんならたちまち反対方向に弾き飛ばされてしまうのである)他にも硬い潅木には体を挟まれ、いやらしい蔓がザックや足首に引っかかる。苦しい思いをしてどうにかテン場前のポコまでたどり着いたのだが、ここでは最初東側の尾根に乗ってしまい仕方なくそこから西側のポコに移ることになって、その際に間の鞍部で2年前のC.S.地点を発見することができた。(2年前はルーファイを間違えて時間を食ったため本来のテン場までたどり着けず、この場所にテントを張っていたのだ)記憶よりは正しいC.S.地点に近い位置まで来ていたようだ。そうとわかれば後一踏ん張りである。ぼろぼろのPartyを引きずって、炎の1時間20分ピッチでテン場に到着したのはちょうど3時15分頃であった。(5ピッチ目 時速260m)

さすがに皆疲労困憊の状態で、縦走組に少しでも今日の疲労を癒してもらうためにさっそく秘密兵器の炭酸ジュースを飲んでもらった。(もはや藪漕ぎの趣旨とはかなり離れたところにきているような気もしたが、どうやら森戸は給水制限がかなり堪えていたようなので仕方ないだろう)あまり時間の余裕もなかったので4時からはさっさと天気図を書き出し、半にはもう米を炊き始めることにした。今日の晩飯は簡単な豚丼なので手間はかからなかったが、まあこれだけ疲れていればなんでも美味しく感じるものだ。それにしても縦走の二人はよく付いてきてくれていた。これで明日の行程は大分楽になりそうである。薮はえてして初日の方が厳しいもので、2日目は下りになるのでルーファイさえ間違えなければそれほどしんどくはならないのである。(ただし悪天候の場合は下りのルーファイは非常に困難になるのでこの限りではないが)とはいえ明日も朝からしばらくの間は厳しい藪漕ぎが続くことになるだろう。みな今日の行程でもかなり疲れがきているようで、就寝時間の7時半には早々に寝入ってしまった。(初日平均時速 375m 薮移動距離2.1km 薮としてもかなり遅い方にあたるペースだろう)

夜中の12時ごろに一度目を覚ましてしまったため、一度テントの外に出て森を眺めてみた。周りを覆っている樹木の間から微かに星の光が瞬いている、この分なら明日の天気は問題なさそうだ。俺は奥美濃の夜の空気を十分肺に吸い込んでから、再びテントの中に戻って眠りについた。

6月25日 晴れ

起床

午前4時起床。薮の中であるため空の様子はよくわからないが、少なくともすぐに雨が降るという感じではなさそうである。朝食はご飯と味噌汁の簡単なもので、ほかに温めて食える具が1品ずつ付いていた。この日も比較的テキパキとした行動で、1時間後の5時に出発。昨日の続きである傾斜のゆるい薮を進み始めた。

起きたばかりで体の動きが鈍いせいもあるのだろうが、それにしても相変わらず濃い薮である。この辺りはなだらかな地形になっているせいで尾根線も読みづらく、ともすれば稜線上を外れて脇の支尾根に踏み込んでしまいそうになる。C.S.地点先のピークを過ぎてからは道が東に折れ始め、ここからはいよいよ最初の入山地点を目指して道を下り始めることになる。最初の1ピッチ目はあまりペースがあがらなかったものの、50分ほどで3km地点まであと少しの所にあるポコ手前に広がる鞍部に到着し、そこでレストをとることにした。(1ピッチ目 時速360m)

再び行動を再開し、稜線上の潅木を掻き分けて進んでいく。この日はどうやら縦走組の体力もそこそこ回復しているようで、さきほどからペースがだいぶあがってきている。途中尾根が北に折れるところで若干ルーファイをミスってそのまま東に下り降りかけてしまいそうになる箇所があったが、幸いすぐに斜面を降りていることがわかったので一度登り返すことに。それにしてもこの笹薮というのは下るには楽だが登り返すときは本当にしんどい。足元に敷き詰められた笹はとことん滑るし、こちら側に向かって折れている笹の束はまるで逆茂木のように我々の進行を阻もうとしてくる。どうにかこうにか先ほどの尾根まで引き換えして、今度はコンパスを頼りに北東方向に進みなおすことに。そちら側の下りもかなり傾斜がきつく、正直このまま進んで正しいコースなのかどうかは確信が持てなかった。しかしこういう時は読図に自信を持ってコンパス頼りでしばらく突き進めば次第に尾根がはっきりしてくるということも経験上わかっていたので、普段はウエストポーチに入れているコンパスを左手に下げっぱなしにしてひたすら突き進むことにした。(最悪しばらくいって尾根が見えてこなければまた登り返せばいいのである)心配するほどのこともなくすぐに目指すべき尾根は見つかり、再び先に進む。今度も50分ほど行って、3km手前の平らな尾根のところでレストをとった。(2ピッチ目 時速420m)

相変わらずぜんぜん進んでいる気がしないが(まだ3km地点を越えられないとは)、それでも残りは2kmちょっとというところである。まあまだ7時前だ、順調に行けば昼過ぎには下に降りられるだろう。(普段の薮にすれば、それでもずっと早い方である)本当に少しずつだが近づいてきた終わりを見据えて、10分後には再び重い腰を起こすことにする。動き始めてからもまだまだ薮の濃さは改善されていなかったが、それでも初日に比べれば下りの割合が増えていたため徐々にペースはあがり始めた。(下りの笹薮は足で笹を踏み曲げて進めるのでさほど薮が苦にならないのだ)さらに1時間近く進んだところで今日3度目のレストをとる。(729mピーク横の細い尾根 3ピッチ目 時速550m)

いよいよ読図が難しくなってきた。先ほどから傾斜がどんどん緩くなってきた上に、尾根の幅自体が広がってきたため現在位置が判然としないのである。徐々に地形図よりコンパスに頼る時間帯が増えてきており、薮の終わりも近いようだ。また1時間ほどで4km手前の尾根の南よりの場所に着きレストをとる。(4ピッチ目 時速550m)

ここから先はついに薮自体が薄くなり始めたようで、潅木の数も減り、ほんの微かだが踏みあとのようなものも見つけられる。こうなるとみな俄然元気になってきて精神的にも余裕が出てきたようだ。この日は薄曇の天気が続いていることもあり、薮としては最高のコンディションと言ってもいいだろう。(晴天だと日差しのせいで暑すぎ、ガスが出すぎると視界が悪くルーファイが困難になるため)50分後に5km手前の平らな場所に着いたときには、ほぼラスト1ピッチで下り終えられることがわかっていたのでここで最後のレストをとることにした。(5ピッチ目 時速1km)

下山

最後の1ピッチはもはや薮ともいえないような爽快な道で、傾斜がきつく幅の広い斜面であったためルーファイはほとんどあきらめてひたすらにコンパス頼りで進んでいった。しかし薮の最後の下りでは、どこを下っていても隣が本物の尾根に見えるから不思議である。(そう思ってそっちに行ってみると、今度はさっきの場所が尾根に見えるのだ)最後は通常の薮では考えられないほどの楽なコースで下山。最初の入山口からは多少離れた場所に出てしまったがおそらく最後のところで一本尾根を間違えてしまったのだろう。(6ピッチ目 時速900m、2日目平均時速 640m 薮移動距離3.2km)

無事に下に降りてからは、初日の林道を引き返して前田さんの車を止めたところまで引き返すことに。途中地元のおばあさんに出会い、話を聞いたところでは山菜取りに来ているということである。(崩落箇所の巻き道はこのような人達が使っているのだろう)


山行を終えて

感想・総括

結局今回は天候に恵まれたこともあったが、この金草岳は非常に条件のいい薮であるということがわかった。(どうも最初に行った時の印象が悪すぎたようだ)縦走面のお二方がこれを機にまた薮に登りたいと思ってくれればこれ以上の幸いはないのだが。(果たしてそんなことがあるかなあ…)

(薮総移動距離 5.3km 全平均時速 500m)